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遠赤外線のうち13ミクロンの波長域のものは、大気にあまり吸収されないで透過しますので、「大気の窓」領域と呼ばれています。 二酸化炭素の増加によって引き起こされる地球温暖化に対して、「大気の窓」付近の赤外線の吸収が大切な役割を演じています。
これについて述べる前に、「大気の窓」が、人工衛星から地球を観測する際に利用されていることに触れておきます。 気象衛星から可視光線で昼間の地球を観測するとき、日射をよく反射して白く見える部分が雲で、日射をあまり反射しないために暗く見える部分が雲のない地域です。
このように、昼間の雲は可視光線によって観測できますが、日射が地球を照らしていない夜間には、可視光線を利用できないので赤外線で観測しています。 空に浮かぶ雲の表面は、高度が高いほど低温です。
高さが約15キロメートル以下の対流圏では、1キロメートル上昇するごとに気温が約6℃ずつ低くなっています。 これに対応して、雲の表面の温度も高さとともに低くなっているのです。
熱帯の海面が25℃よりも高温であることは珍しくないのですが、入道雲の頂は氷点下40℃以下の低温であるのがふつうです。 前に述べたように、物理学の「ステファン.ポルッマンの法則」によって、高温のものから出る赤外線は強く、低温のものからは弱い赤外線が出ています。
従って、気象衛星から地球を観測するとき、強い赤外線の放出しているところは高温の海面や地面であり、弱い赤外線の出ているところは低温の雲の頂だと識別できます。 このようにして、夜間の雲は、遠赤外線を利用して観測されているのです。

その場合、「大気の窓」以外の波長域では、地表面や雲から出ている赤外線は、大気に吸収されてしまうので人工衛星に届きません。 牛乳風呂の底に沈んでいる石けんを上から見ようとしているのと同様です。
1方、「大気の窓」の波長域では、地表面や雲から出る赤外線は大気に吸収されずに人工衛星に達するので、真水の底に沈んだ石けんを見るのと同様に、雲などを観測できます。 このように、人工衛星から地球を遠赤外線観測する場合には「大気の窓」の波長が利用されています。
大気は、窒素、酸素、水蒸気の他、多くの気体の混合したものですが、その主な成分気体は赤外線を吸収しないので、温室効果に関係しません。 赤外線を吸収して温室効果に役立っている気体は、空気中に少しだけ含まれている水蒸気、二酸化炭素などです。
水蒸気を除いた残りの空気を「乾燥空気」と呼びますが、乾燥空気の成分は場所や時によって変わりません。 乾燥空気の中に最も多く含まれているのは約78%の窒素です。
遠赤外線の波長域では、大気は、波長が8〜13ミクロンの大気の窓と4〜5ミクロン領域は約21%の酸素、約1%のアルゴンです。 これら21種の気体だけで、乾燥空気の約99。
9%を占めていますが、赤外線を吸収しませんので温室効果に直接関係しません。 残りの約0.1%に含まれている、二酸化炭素、メタン、オゾンなどが、水蒸気とともに遠赤外線を吸収しますので、温室効果を引き起こしています。
大気中の水蒸気は、凝結して雲粒となり、その一部が雨粒に成長して降水となり地球を潤しています。 水蒸気は、また、遠赤外線をよく吸収して温室効果に大きく寄与していますから、温暖化問題にとって重要なものです。
空気中の水蒸気量は、空気全体の4%に達することもまれにありますが、大抵の場合には1%以下です。 この場合でも、水蒸気による遠赤外線の吸収が大きいので、温室効果に非常に役立っています。
空気中にわずか1%以下しか含まれていない水蒸気、二酸化炭素、オゾン、メタン、1酸化2窒素などの微量成分は、遠赤外線を吸収して大気の温室効果に貢献していますので、「温室効果気体」と総称されています。 酸化、窒素、オゾン、メタン、水蒸気、二酸化炭素の吸収の状況を示しています。
次の6段目は、大気全体の吸収する様子を表しています。 その結果、水蒸気は地表面から出ている赤外線の60〜70%を吸収していて、二酸化炭素の吸収する約25%に比べて非常に大きいのです。

従って、大気中の水蒸気量が変化すると、温室効果の程度が大きく変わることになります。 空気中の水蒸気量は人間活動によって直接増えたり減ったりしません。
水蒸気は、海面などの水面から蒸発して大気に含まれるようになります。 大気中の水蒸気の一部は雲粒となって空中を浮遊し、また、雨滴となって地上に降ったものが海に戻ります。
このように天然の現象として、水蒸気は大気、川や海の中を循環していて、人間活動の直接的な影響として水蒸気量が変化することはありません。 温度の高い空気は多量の水蒸気を含むことができますので、温暖化が進むと大気中の水蒸気は確実に増え、そのために、さらに温室効果が強く作用して、温暖化が相乗的に進みます。
このような水蒸気の作用は、人間活動による温暖化の直接原因ではなく結果です。 「大気の窓」の波長域では、非常に強い地球放射が出ています。
そのために、温室効果気体が増加してこの波長域の近くでの吸収が増えますと、大気が地球放射を吸収する量もかなり増えることになります。 その結果は地球の熱収支に敏感に影響しますから、温暖化を引き起こします。
二酸化炭素が遠赤外線を「完全に」吸収している波長域では、たとえ、二酸化炭素が増えても、それ以上吸収することはありません。 他方、現在の吸収率が100%以下の波長では、二酸化炭素が増加すると吸収が増えます。
その結果、大気は地表面から出た赤外線をより多く吸収しますから、宇宙へ出ていく地球放射が減ることになります。 そのため、地球全体の正味の熱収支は熱の過剰となって、地球が温暖化するのです。
この様子を具体的に述べましょう。 「大気の窓」領域の波長の長い端を区切っているのは二酸化炭素の吸収で、波長の短い方の端を区切っているのは、メタンと酸化、窒素の吸収です。

大気中の二酸化炭素が増えると、透明な「大気の窓」領域の長波長側の境界の位置が短い波長の方へずれ、その結果、「大気の窓」領域の範囲が狭められます。 また、「大気の窓」領域の他方の端を区切っているメタンと酸化、窒素が増加すると、二酸化炭素の増加の場合と同じ6 ぅ第2章大気の温室効果ように、「大気の窓」領域を狭くします。
このように「大気の窓」領域の範囲が狭くなると、地表面からの赤外線を大気が吸収する度合いが大きくなりますので、宇宙へ出ていく地球放射を減らすように作用します。 また、オゾンの吸収帯が「大気の窓」領域の中央付近にありますので、オゾンの増加も同様に宇宙への遠赤外線の放出を減らします。
オゾンは、成層圏の他に対流圏内にもオキシダントとして存在していますが、地球温暖化に大きく寄与しているのは対流圏オゾンです。 この他、フロンも「大気の窓」領域の赤外線を吸収しますので、温室効果気体の一種です。
フロンの増加も地球温暖化に加担しています。 このように温室効果気体が増加して温暖化が起こるのは、「大気の窓」とその付近の波長域で赤外線吸収が強くなるからです。
地球温暖化は、基本的に地球全体の放射収支の変化によって起こることを、前に述べましたが、実際の気候は、様々の現象が複雑にからみあって変化しています。


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